企業の成長を支えるバックオフィス業務において、近年注目を集めているのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。バックオフィスDXとは、経理や人事、総務などの管理部門における業務をデジタル化・効率化することで、従来の非効率な手作業や紙ベースのプロセスを改善し、生産性を向上させる取り組みを指します。
この記事では、バックオフィスDXの基本的な導入ポイントや成功事例について詳しく解説し、企業におけるバックオフィスDXの可能性をご紹介します。DXの導入を検討している方や、業務効率化を目指したい方はぜひ参考にしてください。
バックオフィスDXとは?
企業における業務は、主に顧客と直接やり取りを行う営業・カスタマーサポートなどのフロントオフィス部門と、社内の管理業務を行う経理・人事・総務などのバックオフィス部門に分かれています。
バックオフィスDXとは、先述したバックオフィス部門における業務をデジタル技術を活用して効率化・自動化する取り組みのことです。バックオフィス業務のデジタル化は、単なる作業の省力化にとどまらず、企業の競争力強化や成長促進にもつながると考えられます。
バックオフィス業務とは
バックオフィス業務は、企業活動を支える経理、人事、総務、法務などの部門において行われる業務です。顧客との直接的な接点を持たない「間接業務」や「管理業務」と呼ばれる分野であり、日々の企業活動を支えるための重要な役割を担っています。
バックオフィス部門は、直接的に企業への利益を生み出す業務を行うわけではないことが多いですが、経営の中核を担う肝要な部門です。バックオフィスが円滑に機能することで、フロントオフィスが効果的に業務を遂行できるようサポートしています。
DXの定義
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して企業の業務プロセスや組織文化を根本から変革し、新たな価値を創出する取り組みのことを指します。
バックオフィスにおけるDXでは、業務の効率化や迅速な意思決定を可能にするためのシステム導入や、データ活用が行われます。企業の競争力を強化し、変化に柔軟に対応するための手段として、今や多くの企業がDXに取り組んでいます。
なぜバックオフィスDXが必要とされるのか?
バックオフィスDXが注目される背景には、働き方改革や人手不足といった時代の課題があります。デジタル技術による効率化は、こういった課題に対処し、企業の競争力を高める手段として有効だと考えられています。
働き方改革
近年の働き方改革により、企業ではリモートワーク(テレワーク)やフレックスタイム制、在宅勤務が推進されています。その一方で、バックオフィス部門の業務システムやワークフローがリモートワークや在宅勤務に適していないことも多く、出社が必要なケースも少なくありません。
しかし、こういったバックオフィス業務のデジタル化が進めば、場所を問わずアクセス可能なシステムで業務が進められ、リモートワークや在宅勤務といった柔軟な働き方を導入することができます。従業員のワークライフバランスが向上し、優秀な人材の流出が防げる、といったメリットにもつながると考えられます。
人手不足
少子高齢化が進む日本では、労働力不足が深刻な課題です。バックオフィス業務における資料作成や経費入力などのルーティン業務の中には、IT技術を活用すれば自動化・効率化が可能なものも数多くあります。
そういった業務を自動化・効率化することで、限られた人員で多くの業務を処理することが可能となります。人手不足の問題に対処しつつ、労働生産性の向上が図れるのは、バックオフィスDXにおける大きなメリットであるとも言えるでしょう。
ビジネスの競争が激化
ビジネス環境の変化が速まる中、企業間の競争も激化しています。バックオフィスDXは、組織全体の効率と生産性を高め、迅速な意思決定を可能にします。これにより、企業は市場の変化に柔軟に対応し、競争力を維持・向上させることができます。
デジタル技術の進化によってビジネスの競争が激化する昨今では、ビッグデータの活用も欠かせません。そういった意味でも、DXは必須の取り組みだと言えるでしょう。
バックオフィスDXを成功させるためのポイント
バックオフィスDXを成功させるためには、計画的なアプローチが欠かせません。ここからは、導入の大まかな流れに沿って、それぞれのフェーズで気を付けるべきポイントについて解説していきます。
1)初めに目的を明確化する
DXを行う前に、まずは「なぜデジタル化を進めるのか」という目的を明確にすることが重要です。コスト削減、業務効率化、データ活用など、具体的な目標を設定することで、DXの進捗を測りやすくなります。
2)業務の可視化を行う
目的が明確になったら、現状のバックオフィス業務を可視化し、どのプロセスに課題を抱えているのかを洗い出します。業務フローや手作業の多い部分を見える化することで、DXにより解決すべき課題が明確になります。
具体的には、業務フローや作業内容、所要時間などを洗い出して可視化します。なお、AIをはじめとしたデジタル技術を使った業務の自動化では、「人によってやり方が異なる」というケースには対応しづらいものです。担当者ごとに業務の内容が異なっている場合は、業務の可視化と合わせて標準化も行うとよいでしょう。
3)業務内容に適したツールを選定する
バックオフィスDXに活用できるITツールは、クラウドシステム、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など様々なものが存在します。自社の業務内容に最適なツールを選び、初めに明確化した目的を達成できるようにしましょう。
ITツールはクラウドサービスなどを利用するケースや、自社で開発するケースもあります。選択肢が多い反面、いずれもメリット・デメリットが異なり、どれを選べばよいのかが分からないこともあるでしょう。自社の課題や業務内容をもとに、ITに詳しい人材やDXの専門家に協力を仰ぎ、最適なシステム・ツールを選定することが大切です。
4)初めから全体導入ではなくスモールスタートする
DX導入においては、初めから全業務を一気に変えるのではなく、小規模からスタートし、段階的に進めることが重要です。部分的に導入して結果を検証し、問題点を改善しながら拡大していくことで、リスクを最小限に抑えられます。
5)定期的な効果測定と改善を繰り返す
バックオフィスDXは、ITツールを導入して終わりというわけではありません。導入後も定期的に効果測定と改善を行うことで、課題を解決し、より良い結果を生み出すことができます。データや現場の声をもとに、最初に定めた目標に対する効果を分析し、PDCAを繰り返していくことが必要です。
バックオフィスDXの成功事例
最後に、実際にバックオフィスDXを導入した企業の成功事例について解説します。これからDXに取り組もうと考えている企業の方は、ぜひ参考にしてください。
サッポロホールディングス株式会社
サッポロホールディングス株式会社では、DX施策の推進を加速するための「DX・IT統括本部」を設立し、DXに取り組んでいます。2020年からはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を積極的に導入しており、バックオフィス業務における業務効率化やコスト削減を実現しています。
具体的には、営業支援部門におけるPOSデータのダウンロード作業という長時間の単純作業をRPAによって自動化し、従業員の労働時間が大幅に削減されました。
株式会社ニトリホールディングス
株式会社ニトリホールディングスでは、「製造物流IT小売業」というビジネスモデルを掲げて、高度なIT戦略とDX推進に取り組んでいます。バックオフィスDXとしては、経費精算・管理クラウドシステムを導入し、従業員の業務負担やヒューマンエラーを減らすことに成功しました。
それ以前の経費精算システムでは、社員数が約8,000名もいる中で、手入力したものを目視チェックする作業が複雑化しており、精算エラーや差し戻しが多かったそうです。新たなシステムでは他のシステムとのデータ連携によって入力負荷が軽減され、申請内容のチェックも自動化されて業務時間の大幅な削減が実現しました。
ぺんてる株式会社
ぺんてる株式会社では、DXを活用して「モノ作り力」を一層強化するために、2019年から「工場のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)化」を推進しています。バックオフィス部門においてもDX推進に取り組んでおり、その一環として行われたのが経費精算ソリューションの導入です。
経費精算の仕組みが複雑で、手計算では誤りが多く発生していた同社では、経費精算システムの機能で手当を算出する仕組み作りを行い、経費チェックの手間と差し戻し件数を削減することに成功しました。
まとめ
バックオフィスは、企業の経営の中核を担う重要な部門です。バックオフィス業務のDXによって業務効率化・自動化を進めていくと、コスト削減や柔軟な働き方への適応にもつながり、人材不足への対応や事業の成長にも大きく寄与することでしょう。
ただし、バックオフィスDXを成功させるためにはいくつか注意すべきポイントがあります。目的を定め、業務の可視化を行い、スモールスタートでPDCAを回しながら自社に合ったITシステムを導入することが必要です。今回ご紹介した成功事例なども参考にしながら、バックオフィスDXを成功に導いてください。
株式会社オルツでは、バックオフィスDXをはじめとしたDX推進を支援しています。豊富な実績と技術力をもとに、課題のヒアリングからAIソリューションのご提案、実証実験、開発、運用まで一気通貫でサポートいたしますので、ご興味のある方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。